憲法二三条は、「学問の自由は、これを保障する」と定める。・・・一九三三年の滝川事件・・・や三五年の天皇機関説事件などのように、学問の自由ないしは学説の内容が、直接に国家権力によって侵害された歴史を踏まえて、とくに規定されたものである。
学問の自由の保障は、個人の人権としての学問の自由のみならず、とくに大学における学問の自由を保障することを趣旨としたものであり、それを担保するための「大学の自治」の保障をも含んでいる。・・・
大学の自治-学問の自由の中心は、真理の発見・探究を目的とする研究の自由である。それは、内面的精神活動の自由であり、思想の自由の一部を構成する。・・・
憲法二三条は、まず第一に、国家権力が、学問研究、研究発表、学説内容などの学問的活動とその成果について、それを弾圧し、あるいは禁止することは許されないことを意味する。・・・時の政府の政策に適合しないからといって、戦前の天皇機関説事件の場合のように、学問研究への政府の干渉は絶対に許されてはならない。・・・
第二に、憲法二三条は、学問の自由の実質的裏づけとして、教育機関において学問に従事する研究者に職務上の独立を認め、その身分を保障することを意味する。すなわち、教育内容のみならず、教育行政もまた政治的干渉から保護されなければならない。この意味において、教育の自主・独立について定める教育基本法(一〇条参照)はとくに重要な意味をもつ。・・・
学問研究の自主性の要請は、とくに大学について、「大学の自治」を認めることになる。・・・それは、学問の自由の保障の中に当然のコロラリーとして含まれており、いわゆる「制度的保障」の一つと言うこともできる。
大学の自治の内容としてとくに重要なものは、学長・教授その他の研究者の人事の自治と、施設・学生の管理の自治の二つである。ほかに、近時、予算管理の自治(財政自治権)をも自治の内容として重視する説が有力である。・・・
学長・教授その他の研究者の人事は、大学の自主的判断に基づいてなされなければならない。政府ないし文部省による大学の人事への干渉は許されない。・・・
大学の施設および学生の管理もまた、大学の自主的判断に基づいてなされなければならない。・・・
0 件のコメント:
コメントを投稿